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食についての正論

アメリカ人でありながら日本に帰化したビルトッテンさん。
日本でソフト会社の経営者をしています。
彼は経営者でありながら社会問題について
積極的に発言しています。
日本の多くの経営者の発言は視野が狭く
自社の利益優先でがっかりするものが多いですが
彼はまったく違います。その発言はいつも啓発されます。
是非、下記の文章を読んでください。
どの新聞、テレビよりも正論だと思います。

食生活の見直しを

中国からの輸入品がどのように危険なのか判断するだけの情報を持っていないが、今回の事件が、農薬にせよ、意図的に毒物を混入したにせよ、海外からの食品を「厳しくチェックする」ことなど不可能だと思っている。だからといって輸入業者や日本政府に責任や問題がないというつもりはないが、基本的に「食べる」という行為は呼吸をするくらい生きるうえで必要なことであり、したがって何を口に入れるかは、まさに自己責任だと言えるだろう。

日本の低い食料自給率は政府の政策によるもので、個人ではどうしようもないと思われるかもしれないが、たしかに耕作面積は少ないが自給率を上げることは国民がその気になれば困難なことではない。歴史をみてもそうだし、農業面では気候風土にも恵まれているからだ。家庭菜園を始めた私はとくにそれを実感している。日本が大きく変わったことは、いつの間にか食べ物は作るのではなく、買う(輸入する)ものだと思わされてしまったことかもしれない。

私は米国で生まれ育ったが、もはや人生の半分以上を日本で過ごしている。米国に比べればまだましだが、それでも近年、日本人の食生活は大きく様変わりしたと感じている。肉の消費が増え、米の消費が減り、それにあわせて肥満や糖尿病が増加した。国産の牛肉を食べているつもりでも、現在日本は家畜用飼料として穀物を主に米国から輸入しており、結局日本の農地の何倍もの広さで作られた飼料なしには、日本の畜産は成り立たない。環境と健康の両面で、日本人は食生活を見直す時期にある。

健康にも環境にもよい食べ物といえば、思い出すのは日本の伝統的な食事である。そして、精白しない穀物を中心に野菜や海藻を多く摂取し、動物性脂肪、糖分が少ない日本の食事が理想的だったことに、米国は何十年も前に気づいていた。

1970年、心臓病、癌、肥満などの成人病によって増大する医療費を問題視した米国では、上院に特別委員会が設けられ「食事と健康の関係」について研究が行われた。1977年に報告書が発表され、委員長の名前から「マクガバンレポート」と呼ばれた。食生活の変化と病気を広範囲にわたって調べ上げたその報告は、癌や脳血管疾患、糖尿病、動脈硬化などが増えたのは、現代医療が手術や薬に頼りすぎで、誤った食生活が原因だというのが結論だった。

報告書は、肉や乳製品の摂取を減らすようにというガイドラインを提唱した。その結果どうなったかといえば、今の米国の現状を見ればあきらかなように、医学会、畜産業界から大反発を受け、「肉、乳製品を減らす」は、「飽和脂肪の摂取をへらす」に書き換えられた。そして「食べる量を減らす」というメッセージは削除された。米国の肉の消費量は増え続け、同時に「ローファット(低脂肪)」をうたう加工品が次々と開発された。しかしそれによって疾病が減ることは、もちろんなかった。

食べ物は、その土地の気候、風土、文化と深く結びついている。また身体だけでなく、楽しみや社会的な交わりにおいて人々に幸せと精神的な安定をもたらし、それによってより健康が促進されるという側面も持つ。だからこそ、高脂肪の料理とワインを大量に消費するフランス人は、米国人よりずっと健康で動脈硬化も少ないという『フランスの逆説』と呼ばれる現象も起こる。

素人である私は栄養学の面から判断を下すことはできないが、日本という国に住む人々は、伝統的にそうであったように、遠い国から運ばれたものよりも、近くでとれた新鮮な、できれば植物を多くとるようにすることが環境にとっても健康にも好ましいのだ。ましてや遠くの国からきた、中身のよくわからないものは、避けるにこしたことはないだろう。

さらに、マクガバンレポートも発した「食べる量を減らす」という提言もこれからますます重要となってくる。食品業界や、消費を増やしたい政府は歓迎しないメッセージだが、人類史において今ほどの飽食の時代は過去になかった。「食べ物は薬だ」と言ったヒポクラテスの言葉にわれわれは返るべきだ
by windsflowcafe | 2008-03-24 23:49
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